これって薬疹ですか?
1か月前に薬が変わったんだけど、
最近胸のあたりが赤くなってきた。これって薬疹?
先日、処方薬のお渡しの際に患者さまより受けたご相談です。
結論から申し上げますと、、、
「薬が原因かどうかは分かりません。」
発疹の原因は多岐にわたり、原因を特定するのは困難です。
ただ薬剤が原因で症状が現れることも多く、また症状の出方も様々です。
そこで今回は薬剤が原因となる発疹について、頻度が多いもの、見逃せないものについてまとめてみました。
まずは皮疹の種類からみていきましょう!
皮疹の種類
斑:周囲の皮膚と同じ高さの発疹
丘疹:周囲の皮膚から盛り上がった発疹
水疱:内容物がわかる発疹
びらん:周囲の皮膚より低くへこんでいる発疹
かひ:皮膚表面に付着している発疹
水疱やびらんが広範囲に出現する場合は重篤な疾患の可能性があります。
蕁麻疹(じんましん)
原因として可能性が高いのが蕁麻疹(じんましん)です。
皮膚の一部が突然、蚊に刺されたように盛り上がり、短時間で跡を残さず消えてしまう皮膚の病気です。 赤みや強いかゆみを伴いますが、たいていは数十分~1日以内に治まります。¹⁾
経口摂取後1〜2時間から15日で現れることが多いです。²⁾
原因を特定できるじんましんは全体の1~3割ほどで、多くの場合、原因ははっきりわかりません。
どんな薬でも蕁麻疹を引き起こす可能性があります。
急性蕁麻疹の症例の25%程度が慢性化します。
慢性化すると週に2回ほど症状が現れるようなことが6週間以上続きます。²⁾
固定薬疹
同じ薬剤を服用するたびに同じ部位に皮疹を繰り返す特殊な薬疹です。
硬貨から卵大の楕円形の境界のはっきりした疼痛や灼熱感を伴う紅斑ができます。
口腔内や口の周りに症状が現れやすく、次いで手指や四肢の外側など物理的な刺激が多いところにも現れやすいです。近年は減少傾向にあります。
鎮痛薬、抗菌薬、催眠薬、食品添加物が原因となることが多いです。
口唇ヘルペスだと思っていたが、実は服用していた鎮痛薬が原因で口の周りに皮疹が現れていたというケースもあります。
原因と思われる薬剤で、皮疹出現部に パッチテストを施行すると陽性率が高いです。
治療としては使用薬剤の中止が挙げられます。
重症皮膚障害
・スティーブン・ジョンソン症候群(SJS:皮膚粘膜眼症候群)
発熱と眼の粘膜、口唇、外陰部などの皮膚粘膜移行部での重症の粘膜疹を伴い、皮膚の紅斑と表皮の壊死性障害による水疱・びらんが特徴です。
咽頭痛や咽頭違和感などの咽頭異常が先行して見られることも多いです。
紅斑は中央が暗紅色のターゲット様(的)のように現れます。
・中毒性表皮壊死症(TEN:ライエル症候群)
高熱や全身倦怠感などの症状を伴って、口唇・口腔、眼、外陰部などを含む全身に紅斑、びらんが広範囲に出現する重篤な疾患です。
発症数時間から24時間以内に水疱が多発し、剥離が起こり、口腔粘膜、気道粘膜、眼瞼粘膜などにも障害が現れ、唇や舌、瞼や結膜、などもただれ、血の付いたかさぶたに覆われ、眼をあけることも困難になります。
重篤な経過をたどると死亡率は通常20~30%となり、中には、70%に達するという報告もあります。
・SJSとTENの違い
<皮疹の範囲>
体表面積の10%未満=SJS
30%以上=TEN
10~30%=オーバーラップ型
<びらんや水疱が占める範囲の割合>
10%未満=SJS 10%以上=TEN
どんな薬剤でも起こりえますが、
解熱鎮痛剤、アロプリノール(高尿酸血症改善薬)、抗菌薬、抗けいれん薬、分子標的薬で起こしやすいと言われています。
まとめ
今回は薬剤や原因となる発疹の中で、頻度が多いもの、見逃せないものをまとめました。
蕁麻疹であれば、半数以上は治療なしでも軽快します。
ただし、症状がひどいものや、6週間以上続くものは慢性化している可能性があるため、治療が必要となってきます。
固定薬疹やスティーブン・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症などの重篤な皮膚障害の場合は薬剤の服用中止、またステロイドの投与などの治療が必要となってきます。
粘膜付近の皮疹や発熱を伴う皮疹があれば、すぐに処方医または薬剤師にご相談ください。
参考文献
1)第一三共ヘルスケア ひふ研
2)Melek Aslan Kayiran et al:Diagnosis and treatment of urticaria in primary care PMID: 31180381 PMCID: PMC6526977 DOI: 10.14744/nci.2018.75010