この頻尿の薬って抗コリン薬?
抗コリン薬飲んでると認知症になるって聞いたから飲みたくない
先日、処方薬のお渡しの際にうけたご質問です。
質問の答えを結論から申し上げますと、、、
抗コリン薬が原因で認知機能低下することはあります。
今回は、薬剤による認知機能障害ついて紹介していきます。
まずは抗コリン薬にはどのようなものがあるか見ていきましょう!
抗コリン薬とは?
抗コリン薬は、神経伝達物質のアセチルコリンがアセチルコリン受容体(ムスカリン受容体)に結合するのを阻害する薬剤の総称です。
抗コリン作用をもつ薬剤には下記のようなものがあります。
抗コリン薬 | アトロピン、鎮痙薬(スコポラミン、ジサイクロミン)、抗潰瘍薬(プロパンテリンほか)、 抗パーキンソン薬(トリフェキシフェニジル、ビペリデンほか)、過活動性膀胱治療薬、 気管支拡張薬(イプラトロピウムほか) |
向精神薬 | 三環系抗うつ薬、フェノチアジン系、ベンゾジアゼピン系 |
H1阻害薬(第一世代) | クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン |
循環器系薬 | シベンゾリン、ジソピラミド、キニジンほか |
過活動膀胱治療薬(頻尿の薬)で用いられる抗コリン薬としては、プロピベリン、オキシブチニン、ソリフェナシン、フェソテロジン、イミダフェナシン、トルテロジンが挙げられます。
アセチルコリン伝達系は、覚醒、注意、記憶機能と密接な関連があるため、この伝達系の阻害で認知機能の低下が容易に出現します。²⁾
認知症の原因
薬剤による認知機能障害はこのグラフの「その他」にあたります。
「その他」の認知症の中には原因を早期に治療することで、劇的に認知機能が回復することがあるため、この鑑別が重要になってきます。
薬剤による認知機能障害では、原因となりうる薬剤を中止することで、認知機能障害が改善することがあります。
薬剤による認知症の特徴
薬剤による認知症は、次のような特徴があります。
・注意力低下が目立つ
・薬剤服用による認知機能障害の経時的変化がみられる
・せん妄(幻覚、錯覚、妄想、見当識障害)に類似した症状を呈する場合がある
・薬剤中止により認知機能障害が改善する
・薬剤の過剰投与により認知機能障害が悪化する
まとめ
今回あげた薬剤以外でも認知障害を生じる薬剤は多く存在します。
そのため飲んでいる薬剤が多い場合には原因薬剤の特定が難しくなります。
薬剤性の認知機能障害が疑われる場合は、処方薬の数を最小限にする、副作用の少ない薬剤を選択してするなどの調整が必要となります。
常に副作用の発現に注意をはらうなど、薬剤による認知障害の予防と早期発見が重要です。
気になる症状があれば、お近くの医師、薬剤師にご相談ください。
参考文献
1)薬がみえる vol.1 、メディックメディア
2)水上勝義、薬剤による認知機能障害(第105回日本精神神経学会総会シンポジウム)